聖教

【しょうぎょう】

聖教とは

聖教とは釈尊しゃくそんによってき示された、さとりをひらくための教えのことをいう。また、教えを説きしるした仏典ぶってんの総称のことをいう。

経論釈きょうろんしゃく

仏典の分類の一種に経論釈というものがある。それぞれ、以下のものを経・論・釈という。

  • 経……釈尊が直接説かれた教えをあらわしたもの
  • 論……菩薩ぼさつがたが経をけてその内容を解釈した著述ちょじゅつのこと
  • 釈……経や論の内容を承けて高僧方がさらに詳しく書いた著述のこと

また、釈のことを「しょ」ともいう。

きょうりつろん

また、経律論という分類もある。詳しくは仏教知識 「経」の「三蔵」を参照のこと。

こちらの分類には釈尊の教えやそのちゅうしゃくしょだけでなく律(仏教教団の規則をまとめたもの)が含まれている。

浄土真宗本願寺派における聖教

浄土真宗本願寺派では先ほど示した経論釈の中でもおうじょうじょうもん、つまり我々ぼんを浄土へと往生させ、さとりをひらかせる阿弥陀あみだぶつ本願ほんがんのはたらきについて説かれたものを聖教としている。

しょうの聖教

具体的には

  1. じょうさんきょう
  2. 七高僧しちこうそう撰述せんじゅつ
  3. 親鸞しんらんの撰述

を正依(まさしくどころとする)の聖教としている。(『浄土真宗辞典』P.340 より参照)

これらを経論釈の分類に対応させると次のようになる。

「浄土三部経」すなわち『仏説ぶっせつ無量寿むりょうじゅきょう』『仏説かん無量寿むりょうじゅきょう』『仏説阿弥陀あみだきょう』のことをいう。浄土真宗ではこの三つの経を拠り処とする。

七高僧の撰述のうち、りゅうじゅ菩薩の『十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん』の「易行いぎょうぼん」や天親てんじん菩薩の『無量寿経優婆うば提舎だいしゃ願生がんしょう』(『浄土論』、『往生論』)がこれにあてはまる。

釈(疏)

残りの七高僧である曇鸞どんらんだいどうしゃくぜん善導ぜんどうだい源信げんしんしょう源空げんくうしょうにんの著述がこれにあたり、

  • 曇鸞大師の『無量寿経優婆うば提舎だいしゃ願生がんしょうちゅう』(『浄土じょうどろんちゅう』、『往生おうじょうろんちゅう』)『さん阿弥陀あみだぶつ
  • 道綽禅師の『安楽あんらくしゅう
  • 善導大師の『かん無量寿むりょうじゅきょうしょ』『ほうさん』『おうじょう礼讃らいさん』『観念かんねん法門ぼうもん』『般舟讃はんじゅさん
  • 源信和尚の『往生おうじょうようしゅう
  • 源空(法然)聖人の『せんじゃく本願ほんがん念仏ねんぶつしゅう

などがある。

しゅう親鸞しょうにんの著述もこれに分類される。『けん浄土じょうど真実しんじつ教行証きょうぎょうしょう文類もんるい』(『教行信証きょうぎょうしんしょう』)など、多数の著述が存在する(詳しくは仏教知識「親鸞」を参照)。

聖教に準ずるもの

また、これらの経・論・釈に加えて本願寺第8代蓮如れんにょあらわした『ぶんしょう』などが聖教に準ずるものとして位置付けられている。

参考文献

[1] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)

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