極楽浄土
極楽の原語は、サンスクリット(梵語)でスカーヴァティーである。これは、「幸あるところ」を意味し、漢訳では「安養」「安楽」などと記される。一方、浄土に対応するサンスクリット経典での表記は見当たらない。多くはブッダ・クシェートラという語が使われている。これは漢訳では「仏国土」と訳される。すなわち極楽浄土とは、「仏の清浄な国土で幸あるところ」となる。
それは、阿僧祇劫というはるか昔に世自在王仏のもとで出家した法蔵菩薩が、五劫という長い時間を思惟してすべての衆生を救いたいと誓願をおこした。その誓願を成就するために、兆載永劫におよぶ清浄な行いによって、十劫の昔に阿弥陀如来となり、穢れ(煩悩や罪悪)のない国土を完成した。『仏説阿弥陀経』には、西方の十万億の仏国土を過ぎたところにあると説かれている。『仏説無量寿経』には、この法蔵菩薩の四十八の誓願が説かれ、この中で衆生の往生(浄土に生まれる)の因(生因三願(仏教知識「四十八願」参照))が誓われている。極楽浄土は、死後におもむく(往生)来世浄土にあたる(仏教知識「浄土」参照)。
浄土真宗の宗祖親鸞は、七高僧の源信の教えを受け継ぎ、阿弥陀如来の極楽浄土を二つに区別している。それは、他力念仏の行者のみが往生する真実報土と、自力念仏の行者が往生する方便化土である。親鸞は『正像末和讃』に、
報土の信者はおほからず
化土の行者はかずおほし
自力の菩提かなはねば
久遠劫より流転せり (『浄土真宗聖典(註釈版)』P.608より引用)【現代語訳】
真実報土に往生する他力念仏の信者は多くないです。
方便化土に往生する自力念仏の行をする者は数多いのです。
自力の菩提心を完成することのできない者は、
無限の過去より今まで迷い続けてきたのです。 (『聖典セミナー「三帖和讃Ⅲ 正像末和讃」』P.174より引用)
と記し、阿弥陀如来の極楽浄土、さらには真実報土に往生することの素晴らしさを示し、『仏説無量寿経』の「第十八願」である他力念仏を勧めている。
参考文献
[2] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)
[3] 『新 仏教語源散策』(中村元 東京書籍 1998年)
[4] 『続 仏教語源散策』(中村元 東京書籍 1998年)
[5] 『浄土真宗聖典 -註釈版-』(本願寺出版社 1988年)
[6] 『聖典セミナー 三帖和讃 III 正像末和讃』(浅井成海 本願寺出版社 2004年)