頻婆娑羅(ビンビサーラ)

【びんばしゃら】

釈尊しゃくそん在世ざいせの頃のマガダ国の王。サンスクリット、パーリ語ともにビンビサーラ。漢訳かんやくでは頻婆娑羅びんばしゃらと記される。ラージャグリハ(王舎城おうしゃじょう)に住み、きさき韋提希いだいけ(ヴァイデーヒー)で子は阿闍世あじゃせ(アジャータシャトル)である。頻婆娑羅は、釈尊の出家しゅっけ直後にその立派な姿を見て転輪王てんりんおうになるのが相応ふさわしいと思い、釈尊に財産と軍隊を与えるので還俗げんぞくすることをすすめるが断られる。釈尊が成道じょうどうした後は、釈尊に帰依し、仏教教団最初の寺院となる竹林精舎ちくりんしょうじゃを寄進するなど、在俗ざいぞく信者として教団を支えて保護をした。晩年は、提婆達多だいばだった(デーヴァダッタ)にそそのかされた王子阿闍世によって幽閉ゆうへいされたことが、『仏説ぶっせつかん無量寿むりょうじゅきょう』に記されている。親鸞しんらんは『教行信証きょうぎょうしんしょう』「信巻しんかん」に『涅槃経ねはんぎょう』を引用して、頻婆娑羅の最期は阿闍世によって殺害されたとしている。

参考文献

[1] 『岩波 仏教辞典 第二版』(岩波書店 2002年)
[2] 『ゴータマ・ブッダ 中<普及版>』(中村元 春秋社 2012年)
[3] 『ブッダ その思想と生涯』(前田專學 春秋社 2012年)
[4] 『浄土真宗聖典 顕浄土真実教行証文類(現代語版)』(本願寺出版社 2000年)

関連記事

釈尊
誕生 釈尊(しゃくそん)は、紀元前624年~463年頃(諸説あり)、ネパール南部のルンビニー(現在ルンミディ村)で、コーサラ国の属国であるカピラヴァストゥ(......
韋提希(ヴァイデーヒー)
韋提希(いだいけ)は、マガタ国の国王頻婆娑羅(びんばしゃら)(ビンビサーラ)の妃(きさき)で、後の国王阿闍世(あじゃせ)(アジャータシャトル)の母である。サンス......
阿闍世(アジャータシャトル)
阿闍世(あじゃせ)は、マガタ国の国王頻婆娑羅(びんばしゃら)(ビンビサーラ)と王妃韋提希(いだいけ)(ヴァイデーヒー)との間に生まれた。サンスクリット(梵語(ぼ......
提婆達多(デーヴァダッタ)
提婆達多(だいばだった)は、釈尊(しゃくそん)の十大弟子(じゅうだいでし)の一人である阿難(あなん)の兄で、釈尊とはいとこにあたり、年齢は釈尊より30歳ほど若か......
観無量寿経(仏説観無量寿経)
成立 一巻からなる。浄土真宗の根本経典「浄土三部経」と呼ばれる経典の中の一つ。『無量寿仏観経(むりょうじゅぶつかんぎょう)』『十六観経(じゅうろくかんぎょう......
涅槃経
「涅槃経(ねはんぎょう)」とは、釈尊(しゃくそん)の入滅(にゅうめつ)である大般涅槃(だいはつねはん)を叙述(じょじゅつ)し、またその意義を問(と)う経典類(き......
親鸞
浄土真宗の宗祖。鎌倉時代の僧侶。浄土宗の宗祖である法然の弟子。
顕浄土真実教行証文類
概要 浄土真宗の宗祖である親鸞の主著。『教行信証』『教行証文類(もんるい)』『広文類(こうもんるい)』『本典(ほんでん)』などともいう。浄土真宗の教義体系が......