帰敬式

【ききょうしき】

帰敬式とは『浄土じょうど真宗しんしゅう 法式ほっしき規範きはん』によると

門信徒が仏祖に帰敬のまことをあらわす儀式。 (『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』 P.164より)

このように記載されている。また、帰敬式は「おかみそり」ともいう。これは生きながらにして仏弟子となる儀式である。 帰敬式は僧侶が受けるものではなく、門信徒が受ける儀式である。これは生涯で一度だけ受けることができる。受式者は尊前で三帰依文を唱え、門主、前門主、しんと呼ばれるいずれかの僧から「おかみそり」をいただく。実際に剃刀かみそりの刃で髪を刈るのではなく、頭にあてるほどのものである。そして浄土真宗の教えとともに生かされていくことを誓い法名をいただく。法名は事前に申請すればある程度の漢字を自分で考えて選ぶことができる。法名に関しては仏教知識「法名」に記載あり。

実際の次第は以下の通りである(『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』 P.164-166より)。

受式者・係員着座 (受式者は念珠を持ち、式章をかけて着座)
御入堂・御焼香 (受式者、導師に合わせて合掌礼拝)
三帰依文 (導師が尊前に向かって、合掌のまま「南無帰依仏」と第一句を唱え、受式者も合掌のままこれを復唱する。第二句「南無帰依法」、第三句「南無帰依僧」も同じ。終わってから礼拝する)
外陣の席に御起立
総礼 (受式者一同、丁重に礼をする)
披露 (係員が「○○教区○○組○○寺門徒
   ○○○○さん(帰敬文ききょうもんを読む人の名前)
   ○○○○さん(法名ほうみょうを受けとる人の名前)
 ほか何名、剃刀おかみそりを頂きます」と披露)
剃刀おかみそり (受式者は合掌の市井で受式。
 導師は「おかみそり」が終われば正面の席に御起立)
法名授与 (係員が「法名拝受」と告げる。
 受式者の代表が法名を受けて着座)
帰敬文拝読 (係員が「帰敬文」と告げる。
 受式者の代表が帰敬文を読み着座)
きょう (係員が「一同へ御教諭を戴きます」と告げる)
十一 総礼 (御教諭が終わると、係員が「一同礼」と告げる。
 受式者一同、丁重に礼をする)
十二 御自席に御着座 (受式者は導師にあわせて合掌礼拝)
十三 御退出
十四 祝辞 (三拝部の係員が、兼ねて帰敬式の意義を述べる。
 巡教じゅんきょうに際しては随行ずいこう講師が行う)
十五 受式者・係員 退出

〔注〕帰敬式は、帰敬式手代てがわりが行うこともある。

帰敬文

帰敬式は本願寺においてしょう報恩講ほうおんこう盂蘭うらぼんなどの特別な日程以外では、原則一日二回、晨朝じんじょう勤行ごんぎょうと午後一時半より行われている。また、「おかみそり」が出来る僧侶が慶讃きょうさん法要ほうようなどで各地の寺院などに出向した際、その寺院で行うこともある。

冒頭に「生きながらにして仏弟子となる」と記載したが、他宗では葬儀の時に引導いんどうを渡すことによって仏弟子となるという考え方もある。しかし、生きている時にいただけることが浄土真宗の特色である。これはとてもありがたいことである。また、仏弟子になるということはさまざまな迷いから仏教の真理しんり(本質)とともにあらたな人生の始まりを意味するものである。

参考文献

[1] 『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』(浄土真宗本願寺派 勤式指導所 本願寺出版社 1999年)
[2] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)

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