浄土真宗における結婚式

【じょうどしんしゅうにおけるけっこんしき】

浄土じょうど真宗しんしゅう本願寺ほんがんじでは本願寺聞法もんぼう会館かいかん大谷おおたに本廟ほんびょう、各地域の別院や一般寺院などで結婚式を行うことが可能である。これは一般的に仏前ぶつぜん結婚けっこんしきとも呼ばれる。

結婚式とは『法式ほっしき規範きはん』によると

結婚式は、親鸞聖人の流れをくむ者にとって生涯しょうがい聞法もんぼうの大切な儀式であり、如来のご尊前において念仏にかおる人生を送ることを表明する儀式。

(『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』P.251引用)

とされる。

一般的に結婚式はその時代でさまざまな様式で行われる。神前しんぜんしきやキリスト教式、最近では宗教を介入せず人前じんぜん式で行うこともある。これらは神、仏、人の前で夫婦のちぎりを表明する目的である。

日本の仏教では明治時代になるまで僧侶の結婚は認められていない。しかし浄土真宗の開祖である親鸞しんらんは鎌倉時代に結婚をした。以降の時代も歴代の宗主しゅうしゅは結婚をして子孫を残した。

さて浄土真宗の結婚式とはどのように行われるのか。以下は筆者が実際に楽人がくにんとして出仕しゅっしした本願寺津村別院での結婚式で用いられたしき次第しだい(次第=順番)の引用である。これは僧籍そうせきを持たない者の結婚式次第であり、僧侶の場合は「一五」のあとに勤行ごんぎょう、念仏、回向えこうが追加され、「二〇」の指輪交換ではなく念珠ねんじゅの交換となる。司婚者しこんしゃとは結婚式を取り仕切る中心人物である。がく雅楽ががくの演奏のことであり、止楽しがくは演奏を終えることである。なお、式次第は適宜てきぎに変更しても良いとされ、もちろん両親・親族などが居なくても式は挙行される。

一、御両親・親族入堂にゅうどう着席
二、開式の言葉
三、合掌がっしょう礼拝らいはい
四、楽
五、新郎新婦入堂着座ちゃくざ
六、止楽
七、楽
八、司婚者入堂登礼盤とうらいばん
九、合掌・礼拝
一〇、止楽
一一、けい とん
一二、しんらい
一三、磬 いっとん
一四、表白ひょうびゃく
一五、磬 二音
一六、楽
一七、司婚者降礼盤ごうらいばん
一八、止楽
一九、司婚の言葉
二〇、指輪交換・記念念珠授与
二一、司婚者転座てんざ
二二、新郎新婦誓いの言葉
二三、新郎新婦焼香
二四、新郎新婦転座
二五、司婚者祝辞
二六、楽
二七、合掌・礼拝
二八、司婚者退出
二九、止楽
三〇、楽
三一、式盃しきはい
三二、止楽
三三、楽
三四、乾杯
三五、閉式の言葉
三六、合掌・礼拝

以上

結婚式は儀式であるが、あらためてみると法要顔負けの次第である。この次第でおよそ40分、記念写真など入れて約1時間の内容である。

荘厳しょうごん(本堂のおかざり)で一番の特徴は金の蠟燭ろうそくを用いることである。浄土真宗で使用する蠟燭の色は白、赤、金、銀の四色であるが金はこの結婚式や慶讃きょうさん法要に使うものである。また紅白のもちそなえられる。

司婚者、雅楽を演奏する三管さんかんの楽人、式盃の雄蝶おちょう雌蝶めちょう承仕じょうし、親族、友人などさまざまな人が新郎新婦の新しい門出かどでを祝う浄土真宗の結婚式である。

参考文献

[1] 『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』(浄土真宗本願寺派 勤式指導所 本願寺出版社 1999年)

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