僧侶のつとめ(2) お葬式だけじゃない

【そうりょのつとめ 2 おそうしきだけじゃない】

お葬式だけではない

「僧侶のつとめ」と聞くと、皆さまはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。まず葬儀を思い浮かべる方は多いのではないかと思います。また、寺の中で修行や掃除そうじをしている姿を想像される方もおられるのではないでしょうか。

葬儀は大事なお勤めの一つではありますが、それが全てではありません。もちろん世の中では毎日たくさんの方が亡くなられているとはいえ、個々の寺院単位で考えますとそれほど頻繁ひんぱんにあるわけではありません。修行については浄土真宗では行いません(詳しくはコラム『浄土真宗の「修行」』を参照ください)。掃除は修行としてではなく、必要に応じて行います。

布教ふきょう

教えを説きひろめることを布教といいます。僧侶のつとめとしてはまずこれを挙げなければ始まりません。寺院を護持ごじしていくのもこのためといっていいと思います。浄土真宗では寺院は「聞法もんぼうの道場」といわれます。仏法ぶっぽうを聞く場所ということです。また、この「真宗の本棚」を作っていくことも広い意味では布教ということになるのかもしれません。

もちろん門徒さんに教えを聞いていただくだけではなく、僧侶自身も聞法していかなくてはいけません。以前にも書いたことがありますが、私は僧侶と門徒さんとの違いは僧籍そうせきを持っているかいないかだと思っています。学ぶ姿勢、学びの必要性といった点において何ら違いは無いはずです。門徒さんとともに学んでいくことが大事だと思います。

法務ほうむ

いわゆる「おつとめ(勤行ごんぎょう)」のことを法務といいます。以下、代表的な法務について私なりにご紹介させていただきます。

つきまい

月忌がっき参り、逮夜たいや参りともいいます。門徒さんの毎月の命日にご自宅に伺い、仏壇の前でお勤めをします。お勤めが終わった後は少しお話をします。滞在時間は20-30分ほどになることが多いでしょうか。

馴染なじみのない方も多いかもしれませんが、実はこれが法務の中で最も長い時間を占めています。

月参りは門徒さんとの最も身近な関わりあいです。お勤めの後のお話は雑談がほとんどですが、ご質問をいただくこともあります。私にとってもそれが学びの機会になることがあります。また、仏教に対する門徒さんの姿勢を見て、自分も見習わないといけないと思わされることもあります。

法事(年忌ねんき法要)

法事というと言葉の定義が広くなりますが、ここでは年忌法要について述べます。これも葬儀と並んでよく知られている法務ではないかと思います。勤める年数につきましては仏教知識「年忌法要(法事)」をご覧ください。

年忌法要では月参りよりも長くお勤めをします。また、表白ひょうびゃくを読んで故人の法名を読み上げたり、皆さまに焼香をしていただいたりします。終わってからは法話をさせていただいています。

月参りで顔を合わせることがなく年忌法要でしかお会いしない方も多くおられます。もし何か仏教に関する疑問などがありましたら、この機会を利用して僧侶に質問していただければよろしいのではないかと思います。私たちもできる限り頑張って回答いたします。

葬儀(葬場そうじょう勤行ごんぎょう

浄土真宗本願寺派では、お葬式の際の一連の法要をまとめて「葬送そうそう儀礼ぎれい」と呼びます。内訳としては臨終りんじゅう勤行、納棺のうかん勤行、通夜つや勤行、出棺しゅっかん勤行、葬場勤行、火屋ひや勤行、収骨しゅうこつ勤行、還骨かんこつ勤行があります。それぞれの意味については小冊子『浄土真宗の葬儀のながれ』で解説されていますので、そちらをご参照ください。

一般的にはお葬式というと「葬場勤行」を指すのではないかと思います。ここでは『葬儀規範』に則ってお勤めをします。また七條しちじょう袈裟げさという大きな衣を身に着けます。身動きがとりづらいこと、たくさんの人に見られていること、また故人をおくる大切な儀式であることから、やはり緊張しますし疲れます。大切な法務です。

法話もさせていただきますが、葬場勤行のときには時間がありませんので私は通夜勤行や還骨勤行の後に行うようにしています。このような機会だからこそ頭に入ってきやすいお話というのもあるのかなと思います。逆に、こんなときに話なんて聞いている余裕がないという方もおられると思います。

法座ほうざ

法要や儀式が行われ仏法が説かれる集会のことを法座といいます。「お説教」と呼ばれることもあります。先ほどは布教を大事なつとめとして挙げましたが、法座はまさにそのための場です。

法座の中でも最も大事な行事は「報恩講ほうおんこう」です。宗祖しゅうそである親鸞しんらん聖人しょうにん祥月しょうつき命日めいにち機縁きえんとして法要を勤め、法話が行われます。

法座はお盆やお彼岸を機縁として開かれることもあります。また、定期的に法座を開いている寺院もあります。

その他

その他、新しい仏壇をお迎えしたときに「入仏にゅうぶつ法要」を勤めたり、お墓の前で「納骨のうこつ法要」を勤めたりします。これらはお勤めの内容としては年忌法要とあまり変わりありません。屋外で勤める場合は全員が立ちっぱなしになりますから、短く勤めるようにしています。

月参りは大切

さまざまな法務を挙げさせていただきましたが、私はこの中でも月参りが非常に大切ではないかと思っています。特別感といいますか、印象に残るのは月参りよりも葬儀や報恩講の方だと思います。それに対して月参りは日常的な法務といえます。

月参りは日常的だからこそ大事だと思います。葬儀や法事のときにはゆっくりとお話をする時間がとれませんし、お話を聞く側としてもあまり余裕はないと思います。法座はまとまった時間お話をお聞きいただける大事な機会ですが、一方的になりがちです。

月参りは落ち着いて門徒さんにお話しいただける貴重な機会です。僧侶が一方的にお話をするのではなく、対話をするというのはとても大切だと思います。

参考文献

[1] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)

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