僧侶のつとめ(3) 私が今できること

【そうりょのつとめ 3 わたしがいまできること】

はじめに

このコラムは「僧侶のつとめ(1) お布施の金額」「僧侶のつとめ(2) お葬式だけじゃない」を踏まえた内容になっています。まだ読まれていない方は、これらを先に読まれた方がわかりやすいと思います。「財施ざいせ」「法施ほうせ」などの用語も出てきますから仏教知識「布施(布施波羅蜜)」あわせてお読みいただくといいと思います。

月参り

コラム「僧侶のつとめ」の中で、月参りが大事であると述べました。これを読まれた方の中には「お金が欲しいからそんなことを言ってるんじゃないのか」と思われた方もおられるかもしれません。正直なことを言いますと、それはあります。しかし、それが全てではありません。月参りは門信徒の皆さまとともに故人をしのんだり、対話をさせていただく機会です。これは仏教を伝えていくことに繋がっていきます。

もちろん、だからといって浄土真宗の門信徒は必ず僧侶に月参りに来てもらわないといけないなどということはありません。月参りに限らず、浄土真宗のおつとめはすべて「仏徳讃嘆ぶっとくさんだん」と「仏恩報謝ぶっとんほうしゃ」のために行われます。これらは一人でもできることですから、僧侶がいないといけないということはありません。そのような中で僧侶を呼んで月命日のお勤めをしたいと思ってくださる方の気持ちは本当にありがたいと思います。

寺院や僧侶を必要としてくれている方がおられること、仏教に興味を持っていただいているということ、僧侶としての役割を果たすことができるということはお布施という話を抜きにしてもとてもありがたいことだと思います。

寺院の護持と僧侶の生活

当たり前のことですが寺院の護持ごじにはお金が必要です。また、僧侶にも生活費が必要です。門信徒の皆さまからいただいたお布施でこれらをまかなっていくことになります。

もちろん、お布施だけでは足りないという寺院も多数存在しています。むしろそちらの方が多数派であるといえるでしょう。そのような寺院では住職が兼業で法務を勤めていることが多いようです。また、維持できなければ廃寺はいじ(宗教法人の解散)ということもあります。お布施は義務ではないですし金額が決められたものでもありませんが、お金がなければ寺院は維持できません。

しかし、お金が必要とはいっても目的を見失ってはいけません。僧侶がお金を儲けることを第一の目的にしてしまうとおかしなことになっていきます。あくまで僧侶の目的や役割は仏教をひろめていくことであり、そのために寺院を護持し、また自身の生活費を確保するという順番です。

ここを間違えてしまうと仏教を利用したビジネスになってしまいます。するとお布施は「売り上げ」に、葬儀などの法務は「案件」になってしまいます。こうなってしまわないよう常に心がけなくてはいけません。

私がすべきこと

私が住職をさせていただいている寺院では今のところはお布施だけで生活費をまかなうことができています。つまり私は仏教に専念できる環境にあるということです。これは門信徒の皆さまのご協力あってのことであり、本当にありがたいことです。

私は、門信徒の皆さまは寺院を護持すること、ひいては仏教が弘まっていくことを願って財施を行われているのだと思っています。私たち僧侶が行う法施は財施への対価ではありませんが、私はそのような門信徒の皆さまの気持ちに応えていかなくてはいけないと思います。

私が月参りや法事をつとめさせていただいたときに「僧侶に来てもらって良かった」と思っていただける、そんな僧侶でありたいと思います。単に仏教の知識を増やせばそうなれるというものではありませんが、学ぶ姿勢は持ち続けたいです。

また、共に学んでいける場として法座も大事にしたいと思います。現在、私の勤める寺院では常例の法座を開催しております。人の集まりという点ではだんだんと厳しくなってきていますが、可能な限りは継続し、門信徒の皆さまと共に学べる環境を維持していきたいと思っています。

現在私はとても恵まれた環境にあるといえるわけですが、これが今後も続いていく保証はどこにもありません。兼業や廃寺という可能性は十分に考えられます。ですが諸行無常といわれるように、元より今の状態は「当たり前にあるもの」ではありません。お寺を支えてくださっている門信徒の皆さまに対し私は何ができるのか、僧侶としてどのように布教をしていくべきか、今できることを考えていかなくてはいけないと思います。

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