讃仏偈

【さんぶつげ】
[勤行] [書物] [経典] [浄土三部経]
by 檀特 諒行 (祐貞寺)
2018/02/15(2020/09/28 更新)

『無量寿経』上巻に述べられる四言八十句のじゅ。法蔵菩薩がざいおう仏に向かって唱えた「光顔こうげん巍巍ぎぎ」ではじまる。概要は以下のようになっている。

  • 世自在王仏の徳を讃える
  • 法蔵菩薩みずからの誓願せいがんを述べる
  • その誓願の偽りでないことの証明を諸仏に請う

先の親鸞聖人七百回忌大遠忌に際し、日常勤行に取り入れられた。本願寺のにょじょうにおける、阿弥陀堂でのじんじょう勤行としてつとめられる。また、春季秋季彼岸会のたい法要に際しては、節が付いた讃仏偈作法が用いられる。

他に曇鸞どんらんの『さん阿弥陀あみだぶつ』や、『ごんぎょう』『法華ほけきょう』の中にも讃仏偈と呼ばれるものがある。

原文(漢文)と現代語訳

原文を四句ごとに区切り、現代語訳と共に以下に示す。『日常勤行聖典 解説と聖典意訳』より引用した。また、縦書き表記のものも併せて記載した(矢印ボタン、もしくはスワイプでページの前後移動が可能)。

 

1

光顔こうげん巍巍ぎぎ  じんごく  にょえんみょう  とうしゃ 

み仏の顔は高大な山のように立派で
お力は無限であります。
このような輝きは
同等なものはありません。

2

日月にちがつ摩尼まに  しゅこうえん耀にょう  皆悉隠蔽かいしつおんぺい  にゃく聚墨じゅもく 

太陽や月の光も摩尼まに(※)
宝珠ほうじゅの輝きも
〔み仏の輝きの前には〕かげをひそめ、
すみのようにさえ見えます。

※ 宝球。持つ徳が仏法に例えられる。

3

如来容顔にょらいようげん  ちょうりん  しょうがく大音だいおん  こう十方じっぽう 

み仏のお姿やお顔の素晴すばらしさは
世に比べるものがありません。
その正覚さとりのみ声は
十方じっぽうかいひびきわたります。

4

戒聞かいもんしょうじん  三昧さんまい智慧ちえ  とくりょ  しゅしょう希有けう 

〔み仏の〕行いと学習と努力と
心の平静と智慧ちえ
すぐれたること比べものがなく、
まことに立派であり稀有けうであります。

5

深諦善念じんたいぜんねん  諸仏法海しょぶつほうかい  じんじんのう  涯底がいたい 

深くあきらかに、
海のように広大な諸仏の教えをおも
その深い奥底をきわめ、
そのはてをもきわめておられます。

6

みょうよく  そんよう  にん師子しし  神徳じんとくりょう 

おろかさと邪欲じゃよくぞうの心は
み仏には 永遠にありません。
最もすぐれたお方であり、
そのお徳は量り知れません。

7

くん広大こうだい  智慧ちえじんみょう  こうみょうそう  震動しんどう大千だいせん 

そのとくは広く大きく、
智慧ちえは深く素晴すばらしく、
放たれる光の力は
三千さんぜん大千だいせんかいをもり動かすほどです。

8

がんぶつ  ざいしょう法王ほうおう  過度かどしょう  だつ 

願わくは私も仏となり
み仏とおなじように、
迷いの衆生しゅじょうを苦しみの世界から、
すべて抜け出させたいと思います。

9

布施ふせ調じょう  戒忍かいにんしょうじん  にょ三昧さんまい  智慧ちえじょう 

ほどこしをし心を平静にし、
正しい行いと忍耐にんたい努力どりょく
精神の集中と
智慧ちえみつぎょう〕をきわめましょう。

10

せいとくぶつ  ぎょうがん  一切いっさい恐懼くく  為作いさ大安だいあん 

私も仏となって
あまねくこの誓いの通り実践じっせんし、
すべての不幸な者のために
大きな安らぎを与える者となることを誓います。

11

仮使けしぶつ  ひゃくせんのくまん  りょうだいしょう  数如恒沙しゅにょごうじゃ 

たとえ み仏が
ひゃくせんおくまんおられ、
み仏の数は限りなく
ガンジスかわの砂の数ほど多く、

12

よう一切いっさい  とう諸仏しょぶつ  にょどう  けんしょうきゃく 

すべて これらの
み仏たちをば ようするとしても、
道を求めてこころざしかたく
決してせつしないのには及びません。

13

にょ恒沙ごうじゃ  諸仏しょぶつかい  不可ふか  しゅせつ 

たとえガンジスかわの砂ほど数多く
諸仏しょぶつの世界があり、
またはかり知れぬほどの
数多くの国があろうとも、

14

こうみょうしっしょう  へん諸国しょこく  にょしょうじん  じんなんりょう 

わたしが放つ光はことごとく照らし
この国々に行きわたるでありましょう。
そうなるように努力して、
無限のりょくを得たいものです。

15

りょうぶつ  こく第一だいいち  しゅみょう  どうじょうちょうぜつ 

私を仏にしていただけるならば
その国土はどのみ仏の国よりもすぐれ、
その人々は素晴すばらしく
仏道の場を冠絶かんぜつしたものにしましょう。

16

国如泥洹こくにょないおん  とうそう  とう哀愍あいみん  だつ一切いっさい 

国は最高のさとりにふさわしく、
るいなきものとなるでしょう。
私はまさ一切いっさいしゅじょうあわれんで、
苦しみから抜け出させましょう。

17

十方じっぽうらいしょう  心悦しんねつ清浄しょうじょう  とうこく  らく安穏あんのん 

十方の世界からここに来り生まれる者は、
心はよろこび、清浄しょうじょうになるでしょう。
私の国に来れば
楽しく安らかになるでしょう。

18

幸仏こうぶつしんみょう  しんしょう  発願ほつがん於彼のひ  りきしょうしょよく 

ねがわくはみ仏よ、証明したまえ、
あなたこそ私の証人であります。
私はここに願いを立て、
目標に向かって努力します。

19

十方じっぽうそん  智慧無碍ちえむげ  常令じょうりょうそん  知我ちがしんぎょう 

十方世界の み仏たちの
智慧ちえげんであります。
み仏たちよ 常に
私の心と行いをお知りください。

20

りょうしん  しょどくちゅう  ぎょうしょうじん  にんじゅ 

たとえ 我が身は
ごくの苦しみの中にろうとも、
私は努力しょうじん
決して後悔することはありません。

以上。

なお、最後の二句は俳優の高倉健の辞世の句ともなった。

参考文献

[1] 『岩波 仏教辞典 第二版』(岩波書店 2002年)
[2] 『日常勤行聖典 解説と聖典意訳』(豊原大成 自照社出版 2014年)
[3] 『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』(浄土真宗本願寺派 勤式指導所 本願寺出版社 1999年)

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