重誓偈
『無量寿経』上巻に述べられる五言四十四句の偈頌。
無量寿経の中で、修行者である法蔵菩薩が世自在王仏に出会われすべての生きとし生けるものを救おうと四十八願を誓われた。そのあとに重ねてその要点を三つにまとめて誓われたものが重誓偈である。はじめに、誓不成正覚と三度誓われるので三誓偈とも呼ばれる。次の「原文と現代語訳」の段落に示す 1 ~ 3 の部分が、この「三誓」にあたる。
また、春季秋季彼岸会の晨朝勤行に際しては、節が付いた重誓偈作法が用いられる。
原文(漢文)と現代語訳
原文を四句ごとに区切り、現代語訳と共に以下に示す。『日常勤行聖典 解説と聖典意訳』より引用した。また、縦書き表記のものも併せて記載した(矢印ボタン、もしくはスワイプでページの前後移動が可能)。
1
我建超世願 必至無上道 斯願不満足 誓不成正覚
私は今、世にもすぐれたる誓願を建て 必ず無上の仏の証りに達したいと思う。 斯の(世にもすぐれたる)願が成就せぬ限り 誓って仏とはならない。
2
我於無量劫 不為大施主 普済諸貧苦 誓不成正覚
私は永遠に 偉大なる恵みの主となり、 貧しい者、苦しむ者を普く済おう。 〔さもなくば〕誓って仏とはならない。
3
我至成仏道 名声超十方 究竟靡所聞 誓不成正覚
私が仏となったとき 私の名声は十方世界にとどろくだろう。 〔名声の〕とどかぬところがもしもあるならば 誓って仏とはならない。
4
離欲深正念 浄慧修梵行 志求無上道 為諸天人師
欲を離れ、深く思惟し、 浄き智恵をもて清浄の修行を行い、 仏への道を志し、 天界と人間界との師となろう。
5
神力演大光 普照無際土 消除三垢冥 広済衆厄難
不思議の力は大きな光を放ち、 無限の世界を普く照らし(ママ)、 三垢(貧欲 瞋恚 愚痴)の冥闇を取除いて 広く衆人を厄難から済おう。
6
開彼智慧眼 滅此昏盲闇 閉塞諸悪道 通達善趣門
智恵の眼を開き 此の〔世界の〕昏盲闇を滅し 諸の悪の道を閉塞して 善〔の世界へ〕の門に達せしめよう。
7
功祚成満足 (※)威耀朗十方 (※)日月戢重暉 天光隠不現
仏の位(功祚)に到れば、 威光は十方世界に輝き、 日月も共に暉くことを戢め 天の光も遥かに及ばぬであろう。
※「耀」は『浄土真宗聖典 -註釈版 第二版-』では「曜」となっている (P.25)
※文字化けする可能性があるため「シュウ」の字については画像でも示す。
8
為衆開法蔵 広施功徳宝 常於大衆中 説法師子吼
人びとの為に法の蔵を開いて 広く功徳の宝を施し、 常に大衆の中に在って 雄々しく法を説こう。
9
供養一切仏 具足衆徳本 願慧悉成満 得為三界雄
一切の仏に供養し、 衆の善(徳の本)を具え、 誓願と智恵とを悉く成しとげて あらゆる世界の雄となろう。
10
(※)如仏無碍智 通達靡不照 願我功慧力 等此最勝尊
仏の偉大な智恵の光が あまねく照らさぬところ靡きが如く、 願わくは我が智恵の力も この最勝尊(世自在王如来)と等しいものとならんことを。
※「碍」は『浄土真宗聖典 -註釈版 第二版-』では「礙」となっている (P.25)
11
斯願若剋果 大千応感動 虚空諸天人 当雨珍妙華
斯の願いが若し満たされるならば 三千大千世界も応に感動し、 虚空の神々も 当に美しい天の華を雨と降らせたまえ。
参考文献
[2] 『浄土真宗本願寺派 日常勤行聖典』(浄土真宗本願寺派日常勤行聖典編纂委員会 本願寺出版社 2012年)
[3] 『浄土真宗聖典 -註釈版 第二版-』(教学伝道研究センター 本願寺出版社 2004年)