中啓

【ちゅうけい】

中啓とは僧侶が左手にふた念珠ねんじゅもちいた時に右手で持つものである。きょうほんや念珠など、畳や板敷いたじきなどの地面に直接置いてはならないものを、開いた中啓の上に置く。

ものを置くとき以外はたたんだまま要部ようぶ(柄)を持つ。また中啓を持ったままでは右手がふさがるので、右手を使用する場合は中啓を胸元にす。中啓を持った諸僧しょそうちゃくの際、前に置き左右の人とばらばらにならないように「一」の文字が整列する形で置く。

華籠とともに中啓を持つ場合
中啓を胸元に挿した場合

中啓のほねみは主に三色有り、赤色、黒色、木の色が主流である。名前の由来は折り畳んだ上体の上部がなかば(なかば)ひらくことから中啓と呼ばれるようになった。中啓は仏教に限らず、神道しんとう、歌舞伎、能、狂言といったところでも用いられる。

さまざまな色の中啓

開けば扇形になるものであるがこれをせん代わりに使ってはならない。

参考文献

[1] 『浄土真宗本願寺派 法式規範(改訂版)』(浄土真宗本願寺派 勤式指導所 本願寺出版社 1999年)
[2] 『岩波 仏教辞典 第二版』(岩波書店 2002年)
[3] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)

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