初転法輪

【しょてんぼうりん】

初転法輪しょてんぼうりんとは、釈尊しゃくそんの最初の説法せっぽうのことを指す。転法輪てんぼうりんとは、法(教え)の輪宝りんぼう(武器または車輪)をまわすことをいう。これは、理想の王とされる転輪聖王てんりんじょうおうが輪宝を転じて敵軍を摧破さいはするとされることから、仏の説く法が世の人びとの煩悩ぼんのう邪説じゃせつを打ち破って世に広まることに喩えたものである。釈尊はこの説法の聞き手である聴衆ちょうじゅとして、かつて一緒に苦行をしていた五人を選んだ。釈尊は、彼らが釈尊と決別した後も苦行を続けていた鹿野苑ろくやおん(ムリガダーヴァ)におもむき最初の説法を行った。この時にどのような法を説いたかは正確にはわかっていない。『聖求経しょうぐきょう』『本事経ほんじきょう』『転法輪経てんぼうりんぎょう』などの後世の経典きょうてんにより「中道ちゅうどう」「八正道はっしょうどう」「四諦したい」などを説いたのではないかと伝えられているが、経典によりその説法の内容も異なる。この五人が釈尊に帰依し出家したことにより、仏教教団が始まることになった。釈尊の一生における八つの重大事件、八相成道はっそうじょうどうの一つである。

参考文献

[1] 『岩波 仏教辞典 第二版』(岩波書店 2002年)
[2] 『ゴータマ・ブッダ 中<普及版>』(中村元 春秋社 2012年)
[3] 『中村元の仏教入門』(中村元 春秋社 2014年)

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