彼岸会

【ひがんえ】

「彼岸会」とは日本独特の行事であり、中日ちゅうにち(春分の日と秋分の日)の前後3日間を含めた1週間につとめられる法要のこと。

語源

彼岸という単語は古代インドの「パーラミター(波羅蜜多はらみった)」という単語が元となっている。「パーラミター」には「完成された最高の状態」という意味があり、これは「とう彼岸」などと意訳される。この「到彼岸」が訳されて「彼岸」となった。

「到彼岸」とは迷いの世界である「此岸しがん」からさとりの世界である「彼岸」に渡ることをいう。また、そのために菩薩ぼさつが修める行のことをいう。

六波羅蜜

菩薩が修める行には以下の6種類があり、これを指して「六波羅蜜ろくはらみつ」という。

  1. 布施ふせ ... 施しをすること
  2. 持戒じかい ... 戒律を守ること
  3. 忍辱にんにく ... 耐え忍ぶこと
  4. 精進しょうじん ... すすんで努力すること
  5. 禅定ぜんじょう ... 精神を統一し、安定させること
  6. 智慧ちえ ... 真理を得ること

つまり、彼岸という元々の意味は六波羅蜜の行を修めて、さとりをるという意味になる。彼岸会は平安時代からはじまったとされており、江戸時代になって日本古来の先祖供養の信仰と仏教の教えが結びつき浸透していったとされる。今日でも普段手を合わせることのない人も彼岸の期間には墓へ参ったり、各寺院へ参る行事として親しまれている。

浄土真宗においての彼岸会

彼岸会は、先祖供養の期間ではなく阿弥陀あみだぶつの教えを聞くための仏縁ぶつえんという位置づけである。

そもそも、浄土真宗では先祖供養を行わない。何故なら阿弥陀仏の功徳くどくにより既に往生おうじょう成仏じょうぶつしているのだから、のこされたものがあらためて先祖供養を願う必要はない。先祖と同じく自分も阿弥陀仏に救いとられる身であることを喜び、そのことに気付かせてくれた阿弥陀仏をたたえる。

そのため、浄土真宗では「讃仏会さんぶつえ」ともいわれている。

参考文献

[1] 『お彼岸と永代経』(開山堂出版)
[2] 『浄土真宗辞典』(浄土真宗本願寺派総合研究所 本願寺出版社 2013年)

関連記事

六波羅蜜
菩薩(ぼさつ)が仏道修行(ぶつどうしゅぎょう)の到達点である「智慧(ちえ)」を得るために修行する方法を六つにまとめたもの。波羅蜜(はらみつ)は、梵語(ぼんご)パ......
阿弥陀如来
阿弥陀如来とは、浄土真宗の本尊である。本尊とは宗教の信仰対象となるものである。 阿弥陀如来は、限りない智慧と慈悲をもってすべての者を必ず念仏の衆生に育て上げ、......